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エシカルファッションの日本企業の取り組み事例15選!メリット等も解説 | ナカハラポートフォリオ

エシカルファッションの日本企業の取り組み事例15選!メリット等も解説

エシカルファッションが注目される一方で「何をもってエシカルなのか」「日本企業はどこまで対応しているのか」が分かりにくいテーマでもあります。
この記事では、無印良品やしまむらなど身近な日本企業の具体的な取り組み事例をもとに、エシカルの判断軸や企業ごとの違いを解説します。

1.エシカルファッションに取り組む日本企業の主な事例

ここでは、素材・環境配慮、人権・労働配慮、企業理念や事業特性といった観点から、日本企業の具体的な事例を解説します。

(1)無印良品

無印良品は、再生素材やオーガニック素材の活用を通じて、環境負荷の低減を重視したものづくりを進めています。衣料分野では、社会・環境に配慮した綿花の調達拡大や再生コットンの活用に取り組み、原材料の選定方針や中長期目標も公開しています。
2030年に向けて主要原材料を環境配慮型素材へ切り替える方針を示しており、特定素材の採用にとどまらず、調達段階から環境リスクを管理しようとする点が特徴です。

(2)ユニクロ

ユニクロは、グローバル展開する企業として、調達から生産に至るサプライチェーン全体で環境・人権への配慮を組み込んでいます。取引先工場に行動規範を設定し、監査やモニタリングを通じて労働環境の改善状況を継続的に確認・管理している点が特徴です。
さらに、温室効果ガス排出量の削減や再生素材の活用について数値目標を掲げ、施策を中長期で進めています。

(3)一般社団法人サーキュラーコットンファクトリー

一般社団法人サーキュラーコットンファクトリー(CCF)は、廃棄される繊維を資源と捉え、繊維ごみから紙や建材へ再生する日本発の循環型プロジェクトを推進しています。
衣料廃棄が大量に発生する現状を背景に、製紙会社や繊維関連企業と連携し、サーキュラーコットンペーパーやボードなどの実用素材を開発しました。
リサイクルのみにとどまらず、回収・再生・利用までを一体で設計し、産業横断で循環の仕組みを構築している点が特徴です。

(4)ミズノ

ミズノは、「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」という経営理念を軸に、事業活動とサステナビリティを一体で捉えてきた企業です。創業者の思想である利益の利より道理の理を原点とし、品質を最優先するものづくりや、長期的視点に立った社会貢献を継続してきました。
近年はSDGsやマテリアリティを明確化し、環境配慮型素材の採用、製品リサイクル、健康・福祉分野への技術展開などを体系的に推進しています。

(5)しまむら

しまむらは、低価格・大量供給を前提とする大衆向けアパレル企業としての制約を踏まえつつ、段階的にESG・サステナビリティ対応を進めています。経営計画策定委員会および取締役会の関与のもと、社内横断のESG推進体制を整備し、環境配慮、サステナブル調達、人権・労働配慮、ダイバーシティ、物流・施設、地域インフラなど複数領域で実務的な改善を重ねています。
資材リサイクルやサプライヤー行動規範の整備、衣料品回収の一部導入など、実行可能な範囲から着実に取り組んでいる点が特徴です。

(6)株式会社ビッグジョン

ビッグジョンは、国産デニムのものづくりを基盤に、縫製・加工の国内体制を活かした循環型の取り組みを進めています。フラッグシップモデル「RARE」では、履き込まれた製品を買い取り、店頭ディスプレイやエイジング品として再活用しています。
原料面では、オーガニックコットンを採用し、複数地域の綿をブレンドすることで供給リスクの分散を図っています。

(7)株式会社桑和

桑和は、使用済みユニフォームの回収・リサイクルを仕組み化し、廃棄物削減と資源循環に取り組んでいます。回収対象はポリエステルやT/C、綿、ナイロンなど幅広く、回収証明書やリサイクル完了報告書の発行にも対応しています。
製品面では帝人フロンティアのECOPET®など再生素材を採用し、石油由来原料の使用抑制やCO₂・汚水負荷の低減を図っています。

(8)株式会社プレジール

プレジールは、ポリアセタール(POM)系の新素材繊維Neosilk・Zephyrの開発と、強度や機能性を付与するバイオマスフィラーの提案を通じ、成形・繊維分野における環境配慮型材料を展開しています。
農業用マルチや食品包装向けの生分解性フィルム材料を扱い、薄肉化や発煙抑制など設計面での利点も訴求しています。
さらに、放射線防護ヘルメット分野の補助金・受託研究や、空調設備向けの省エネ・節水・レジオネラ対策コンサルなど、技術応用領域を広げている点が特徴です。

(9)株式会社ヤマダヤ

ヤマダヤは、婦人服の企画・製造・販売を担う企業として、SDGsプロジェクト「tsumugu~& cycle by me~」を立ち上げ、環境配慮と事業運営を結び付けた取り組みを進めています。
GHG排出量の測定や環境配慮型のものづくり、ハンガー回収、在庫管理・消化の改善を通じて、ファッションロス低減を図っています。
生地産地との連携や衣料回収による資源循環、地元企業と連動した環境配慮商品の展開を行い、地域社会とつながる持続可能な事業モデルの構築を目指しています。

(10)清原株式会社

清原株式会社は、手芸・アパレル向け副資材メーカーとして、商品設計と生産工程の両面から環境配慮を進めています。パッケージにはバイオマス配合材や古紙配合紙を採用し、商品によっては紙資材のみとすることで脱プラスチック化を推進しています。
生地生産ではインクジェット方式や小ロット生産を導入し、環境負荷と過剰在庫の抑制に配慮しています。

(11)豊和 株式会社

豊和株式会社は、繊維加工・副資材分野において、環境負荷低減と資源循環を重視した事業運営を行っている企業です。国内生産拠点では、廃棄物の再資源化率向上やゼロエミッション化を推進するとともに、CO₂排出量や水使用量の削減に取り組んでいます。
エシカルファッションにおいては、製品表面に現れにくい副資材・加工プロセスの段階から持続可能性を支える役割を担っている点が特徴です。

(12)山陽染工株式会社

山陽染工株式会社は、染色加工という基幹工程から環境負荷低減と持続可能なものづくりを進める日本企業です。水・エネルギー・薬品使用量の削減や排水処理の高度化に加え、無水染色技術の推進やCO₂排出量の見える化を通じて、製造プロセス全体で環境配慮を徹底しています。
また、公正な取引を前提としたサプライチェーン管理や、小ロット生産による在庫削減にも対応しています。

(13)ラヴィストトーキョー株式会社

ラヴィストトーキョー株式会社は、畜産業由来の温室効果ガス排出や水質汚染といった社会課題を背景に、生活者の選択を通じて持続可能な社会の実現を目指す企業です。共創型ブランド事業を中核に、「CIRCULAR LIVING.」を掲げ、前向きな選択による行動変容を促しています。
環境や社会課題に気づいた生活者の意識を一過性で終わらせず、ファッションやライフスタイル分野からソーシャルインパクトの創出に取り組んでいます。

(14)株式会社Gab

株式会社Gabは、独自の炭化技術「.Garbon」を用いて、衣類や有機系廃棄物を高付加価値素材へ転換する循環型ソリューションを提供しています。
焼却に比べてCO₂排出を抑制しつつ、人工皮革や顔料、繊維原料などへの再利用を可能にし、廃棄削減と資源循環を両立しています。
大量廃棄が課題となるファッション産業に対し、素材レベルでの再設計という実務的な選択肢を提示し、企業のサステナブルな事業構築を支援しています。

(15)コトセン株式会社

コトセン株式会社は、衣料用繊維の整理加工を担う企業として、品質向上と環境負荷低減の両立に取り組んでいます。省エネルギー機器の導入や排水・化学薬剤管理の最適化により、環境への影響を抑えながら安定した加工品質を確保しています。
業界基準に基づく管理体制を整え、サプライチェーン全体の信頼性向上にも貢献している企業です。

2.エシカルファッションとは何か

ここでは、その基本的な定義と対象領域を整理したうえで、サステナブルやSDGsとの違いを解説します。

(1)エシカルファッションの基本的な定義

エシカルファッションとは、衣料品のライフサイクル全体において、環境・人権・社会への影響を踏まえた判断を行うという考え方です。オーガニック素材や特定認証の有無を指す言葉ではなく、どのような基準で調達や生産、情報開示を行っているかという企業姿勢そのものを示します。

対象範囲企画・生産・流通・販売・使用・廃棄までの全工程
重視点環境負荷低減/人権・労働環境への配慮/社会的責任
本質素材や認証ではなく、企業の意思決定の前提となる価値観
主体消費者行動に限定されず、企業活動全体が対象

個別製品の評価にとどまらず、事業運営全体をどう設計しているかが問われる点に特徴があります。

(2)エシカルファッションが対象とする主な領域

エシカルファッションは、環境への配慮だけでなく、労働環境や人権、企業活動が社会に与える影響まで含めて評価する考え方です。製品の素材や製造工程にとどまらず、サプライチェーン全体や地域社会との関係性も対象となります。

環境配慮素材選定、資源利用、製造・物流工程での環境負荷低減
労働環境・人権配慮生産現場の安全性、労働条件、人権尊重、公正な取引関係
社会的影響地域社会への影響、産業構造への関与、事業の社会的責任

これらの領域を整理して捉えることで、企業ごとにどの観点を重視して取り組んでいるのかを読み解きやすくなります。

(3)エシカルファッションとサステナブル・SDGsとの違い

エシカルファッションは「サステナブル」や「SDGs」と混同されやすい概念ですが、それぞれが担う役割や範囲は異なります。
企業が取り組みを発信する際は以下の違いを整理し、自社の位置づけを明確にすることが求められます。

①エシカルファッションとサステナブルの違い

サステナブルは、資源枯渇の防止や環境負荷の低減を通じて、将来にわたり事業や社会を持続させることを主軸とした考え方です。
一方で、エシカルファッションは環境配慮に加え、生産現場の人権や労働環境、取引の公正性、地域社会への影響まで含めて捉えます。

観点サステナブルエシカルファッション
主な焦点環境負荷低減、資源の持続可能性環境+人権・労働・取引・社会的影響
評価対象主に環境指標企業活動全体の社会的責任
位置づけ長期的な持続可能性の考え方より広い倫理的判断を含む実践概念

両者は対立する概念ではなく重なり合いますが、エシカルファッションの方が射程が広く、企業には社会的側面を含めた総合的な評価視点が求められます。

②エシカルファッションとSDGsの違い

SDGsは、各国や企業が社会課題に向き合うための共通言語としての目標体系であり、具体的な施策や実行方法を直接示すものではありません。
一方、エシカルファッションは、環境配慮や人権尊重、労働環境への配慮といった行動を通じて、結果としてSDGsの複数目標に貢献し得る実践的な考え方です。

観点SDGsエシカルファッション
位置づけ国連が定めた国際目標・指針企業や産業における実践的な考え方
役割社会課題への共通の方向性を示す具体的な行動・意思決定の枠組み
具体性目標中心で施策は規定しない調達・生産・流通など実務に直結
関係性達成すべきゴール複数目標に貢献し得る手段の一つ

企業が説明する際には、SDGsを掲げるだけでなく、エシカルファッションを目標達成に向けた具体施策として位置づけ、どの目標とどう結び付くのかを明確に示すことが重要です。

3.日本企業がエシカルファッションを実施するメリット

日本企業がエシカルファッションに取り組むことは、ブランド価値の向上や説明責任の遂行、調達リスクの管理といった、実務上の多大なメリットを享受できます。

(1)グローバル市場における競争力の獲得

アパレル産業は、原材料調達から製造、流通まで工程が長く、環境負荷や人権リスクが顕在化しやすい構造にあります。これらに対してエシカルなアプローチをとることは、長期的な事業継続性の確保に直結します。
特に海外展開や国際取引を行う際、エシカルな基準を根拠をもって満たすことがもはや取引条件となりつつあります。つまり、世界基準に適合することで、グローバルな競争力を維持・向上させることが可能となります。

(2)独自のブランド価値とファン層の確立

製品の背景にある物語(ストーリー)を可視化するエシカルファッションへの取り組みは、競合他社との差別化を図り、強固なブランドロイヤリティを築く強力な武器となります。透明性の高い情報開示は消費者の信頼に直結し、企業の姿勢に共感するコアなファン層を形成します。
これにより、価格競争に巻き込まれない独自のポジションを確立できます。また、倫理性を重視するZ世代など若い層へのリーチを広げることは、中長期的な顧客基盤の拡大に大きく寄与します。

(3)事業継続性(レジリエンス)の強化

エシカルファッションの実践は、サプライチェーンにおける潜在的リスクを可視化させ、攻めのリスクマネジメントとして機能します。 厳格なサプライヤー基準を設けることで、不祥事による取引停止や供給網の寸断を未然に防ぐことができます。また、高い志を持つサプライヤーと連携することで、良質な素材の優先確保や共同での技術開発など、他社にはない競争優位性を生み出し、結果として事業の継続性を盤石なものにします。

4.企業でエシカルファッションを導入する際の注意点

ここでは、導入時に企業が陥りやすい注意点を整理し、現実的かつ継続可能な進め方の前提を解説します。

(1)エシカルの定義や範囲を曖昧にしたまま進めない

エシカルファッションを導入する際は、自社にとってのエシカルの定義と対象範囲を最初に明確にすることが不可欠です。環境配慮、人権・労働環境、社会への影響など、どの観点を重視するかによって施策の優先順位や評価軸は大きく変わります。

(2)一部施策のみで「対応済み」と誤解されないようにする

エシカルファッションでは、素材の一部変更や限定的な施策だけで、企業全体が対応済みと受け取られてしまうリスクがあります。実際には、企画・生産・流通・販売までを含む広い概念であり、単一の取り組みで完結するものではありません。
そのため、自社が対応できている範囲と未対応の領域を正確に把握しておくことが重要です。

(3)サプライチェーン全体を把握できない状態で発信しない

エシカルファッションの発信では、素材やデザインだけでなく、生産背景や取引構造まで説明を求められます。把握が不十分なまま発信すると、質問や指摘に答えられず信頼を損ねかねません。
発信前に、どの工程・取引先まで確認できているかを整理し、説明可能な範囲と未把握の領域を区別して示すことが重要です。

(4)過度な理想論や完璧主義を前提にしない

エシカルファッションは、最初からすべてを整えることを前提とする取り組みではありません。
企業の規模や業態、調達構造によって対応可能な範囲は異なるため、まずは自社で管理できる領域から着手し、段階的に対象を広げていく姿勢が現実的です。
実際、多くの日本企業も理想像を示しつつ、無理のない範囲で継続的に改善を重ねています。

(5)社内外への説明方法を事前に設計しておく

上司や社内関係者、取引先など、説明相手によって関心や判断基準は異なるため、伝え方を一律にしない視点が求められます。そのためには、取り組みの目的や対象範囲、現時点での到達状況を整理し、事実に基づいて説明できる状態を整えることが重要です。
理念や感覚論に偏らず、どの領域にどこまで対応しているのかを明確に示すことで、理解と合意を得やすくなります。

5.まとめ

エシカルファッションは、理想や流行を語る概念ではなく、企業ごとに異なる前提条件のもとで整理される実務的な判断軸です。日本企業の事例を見ると、素材、調達、生産体制、循環設計など重点領域はさまざまで、対応水準にも幅があります。
重要なのは、完璧さを競うことではなく、自社がどの領域にどこまで向き合っているかを把握し、根拠をもって説明できる状態を整えることです。